令和6年度

名 称:笠間市周辺の地質

期 日:令和6年11月8日(金)

場 所:茨城県笠間市内(つつじ公園、滝野不動堂、石切山脈ほか)

講 師:茨城大学助教 細井 淳 先生 

参加者:高教研地学部員ほか21名(講師含む)

行 程:笠間高校駐車場集合→つつじ公園(地形観察)→大郷戸(露頭観察)

→滝野不動堂(石灰岩観察)→石の百年間(見学)→【昼食】→石切山脈(展示場見学)

→石切山脈(奥山採石場見学)→笠間高校駐車場→終了・解散

内 容

笠間市内の地質は大きく3つの時代で構成されている。古い方からジュラ紀付加体、古第三紀火成岩体(花崗岩)、第四紀堆積岩体(友部層)である。本巡検は、これら3つの露頭観察を行った。

最初の見学地、つつじ公園では天候に恵まれ、展望台から笠間市内が一望できた。市街を取り囲む山地の稜線が構成岩体の違いを反映していること、断層の影響を反映した涸沼川の流路、海新期に形成された笠間湾内の堆積岩(友部層)について細井先生から説明を受け、本巡検の概要が確認できた。

2つ目の見学地、大郷戸で友部層の露頭観察を行った。大郷戸は笠間湾の縁周辺のため、笠間焼の材料となる粘土層の層厚は薄かった。粘土層直下の真砂やローム層上部境界部の形状から、ローム層が陸成層(二次堆積)である可能性が示唆される。

3つ目の見学地、滝野不動堂では付加体に取り込まれた石灰岩塊の観察を行った。一部変成作用を受け、大理石(方解石の結晶)が見られた。小規模なカルスト地形も見られる貴重な露頭であった。

4つ目の見学地、石の百年館は笠間市内で産出した岩石や鉱物、稲田石に関する資料などが展示されている。大きな煙水晶の結晶やスカルン鉱床など、貴重な資料を見ることができた。

最後の見学地、石切山脈では前山採石場、第1・2展示場の見学に加え、奥山採石場を現地のツアーガイドのもとで見学した。壮大な石切場の臨場感は、写真では味わえないものがある。岩石の発破方法、岩石を切断するワイヤーの詳細(人工ダイヤモンドの観察)、実際に機械が切断している様子など、ツアーガイドの丁寧な説明を受けた。最後に奥山採石場にて岩石サンプルを各自が拾い集めた。

今回、笠間市内の市街地に近い場所での巡検でしたが、日本の成り立ちに関わる笠間の地質を知ることができた。特に友部層はまだ未解明な点が多々あり、今後の調査研究の対象としていきたい。

       つつじ公園展望台                カルスト地形  

      友部層露頭(大郷戸)                友部層(粘土層)

石切山脈奥山採石場

 

令和5年度

名 称:日立市のカンブリア紀地層と海岸段丘の見学

期 日:令和5年11月24日(金)

場 所:茨城県日立市内(十王ダム周辺、かみね公園、宮田町ほか)

講 師:茨城大学名誉教授 田切美智雄 先生 (現 日立市郷土博物館特別専門員)

参加者:高教研地学部員ほか25名(講師含む)

行 程:日立市十王ダム駐車場集合→周辺露頭の観察→かみね公園展望台移動→海岸段丘の観察→

   日立清掃センター前移動→土石流跡地の見学(断層の観察)→宮田町(県道36号沿)移動→

   土砂災害跡の見学(JX金属カラミ崩壊ほか)→本宮町(観音堂の裏)移動→

   カンブリア紀変成花崗岩の観察→日立市郷土博物館移動→化石観察→終了・解散

内 容

 今回、令和5年9月に起きた水害により、年度当初の巡検内容を一部変更して実施した。

 午前中は、日立市北部に位置する十王ダムの周辺露頭でカンブリア系赤沢層の角閃岩、蛇紋岩、変成流紋岩を観察した。変成流紋岩は、一見、流紋岩と識別できない黒色を呈したものが多数あり、とても興味深い。硬く侵食されにくい変成流紋岩が、局所的に分布する上流側に十王ダムが建設されており、地形を有効活用している様子がよく分かる。

 日立市中央部に位置するかみね公園展望台は、多摩面(30万年前)~立川面(5万年前)までの5つの段丘が一望できる、数少ない場所である。高位段丘1から低位段丘までの様子、道路やJR線路の配置が段丘地形に左右される様子、限られた平坦面の活用が日立市発展の歴史と深く結びついた様子などを知ることができた。

 午後からは、令和5年9月豪雨災害による土砂災害跡地を見学した。災害から二ヶ月経った巡検当日も、多くの道路は復旧していない。崩落斜面は工事未着手の場所も多数あった。土石流により破壊された電柱、氾濫した宮田川により一部が埋没した家屋、JX金属敷地内のカラミ崩壊など、その被害の大きさを改めて実感した。なお、災害跡地の露頭を観察する際、安全には十分に配慮した。

 今回の巡検で、カンブリア系の地質構造、土砂災害について理解を深めることができた。水害により通行不能となった林道が復旧し、年度当初に予定していたカンブリア系と石炭系の不整合面の観察を、次年度以降に計画していきたい。

       

令和4年度

令和4年11月25日(金)、茨城県北部(高萩市・北茨城市・日立市)で合同地区巡検を実施した。講師として、日立市郷土博物館の田切美智雄先生、菊池寛実記念高萩炭礦資料館の鹿田次人さんのお二方をお招きし、ご案内いただいた。
 午前は、鹿田さんに高萩炭礦資料館内で炭礦の歴史を含む第三系石炭層の分布や概要説明を受けた後、2カ所の露頭で野外観察を行った。一つ目の露頭(高萩市秋山)は、花貫川の支流である多々良場川沿いに位置する。褐炭の石炭層が、陸側から太平洋側に向かって傾斜する様子(傾斜角は13度)が見事に観察できた。二つ目の露頭(北茨城市中郷)は、十石堀親水公園近くに位置する。急な崖を下った先では、厚さ6mもの壮大な石炭層がみられ、細かな地殻変動が繰り返された様子や、瀝青炭が観察できた。なお、移動の途中で北茨城市中郷にある送炭遺構に立ち寄り、高萩炭礦当時の様子を伺い知ることができた。

午後は、田切先生から新第三系多賀層群と日立層群の関係性について、高戸小浜海岸(高萩市)と鵜の岬海岸(日立市)において、最新論文の知見に沿った説明を受けた。あいにく、当日の海が満潮かつ時化ており、露頭に直接近づくことはできなかった。しかし、遠くからの露頭観察であったが、微化石(珪藻)で個々のチャネル堆積物の時代決定によって、これまでの日立層と呼ばれた区分が随分変わったことを知ることができた。巡検の最後に日立市郷土博物館へ向かい、館が所蔵する高萩炭礦の貴重なボーリングコアを、田切先生のご厚意で見せて頂いた。

今回の巡検で、県内に素晴らしい石炭露頭があること、新第三系多賀層群と日立層群について再調査が必要な地域があることを知ることができ、とても有意義な巡検となった。

 

 

  

 

令和3年度

令和3年11月26日(金)に帝京科学大学教育人間科学部の植木岳雪教授を講師に招き、筑波山周辺にて野外巡検を行った。
 筑波山市営第一駐車場に集合したのち、筑波山つつじヶ丘駐車場へ移動。おたつ石コースより女体山頂を目指した。途中の見学地点にて、旧茅場跡、ブナ林の分布、切株(年輪の読み方)などの講義を受け、氷期から現在にかけての筑波山周辺の気候について学んだ。
 午後は、ケーブルカーで筑波山神社まで降り、神社境内にあるマルバクス、着生植物(ラン)、ホシザキユキノシタを観察した。その後梅林へ移動し、土石流堆積物とその地形、花こう岩を観察した。梅林はハンマー使用可ということもあり、土石流堆積物の岩石から貴重な斑れい岩サンプルを採取した。
 最後に、筑波山入り口付近の稲葉酒造へ寄り、筑波山からの湧水の講義を受けた。ここで日没時刻となり、この後予定していた古鬼怒川の河原、筑波山麓のミカン畑までは行くことが出来なかった。しかし、地学・植生の分野を兼ねた充実した巡検となった。

令和2年度

令和2年11月6日(金)に茨城大学理学部の安藤寿男教授を講師に招き、北茨城市にて野外巡検を行った。
 午前中は、六角堂から見渡せる炭酸塩コンクリーションについてレクチャーを受けた。新第三紀中新世(約1600万年前)のメタン冷湧水が原因となって、現在の奇岩風景の土台が形成されたとのことであった。岩石中に残された数多くの巣穴化石の立体的な構造や化学合成二枚貝類の化石を観察することができた。また、小規模ながらも不整合面が確認でき、貴重な露頭であることが再認識できた。

 午後は長浜海岸において、多賀層群の海底谷埋堆積物と谷壁が明瞭に見える露頭を観察した。また、貝類化石を核とするノジュールや凝灰岩などのサンプル採取を行うことができ、有意義な巡検となった。

     

令和元年度
 令和元年11月29日(金)に産業技術総合研究所の細井淳氏を講師に招き、棚倉断層と東金砂山礫岩の変形礫の見学を行いました。
 午前は(仮称)北沢トンネル工事現場(水府村側)と周辺の断層破砕帯の見学をしました。トンネル見学では残念ながら、直に露出した岩盤を見るなどは出来ませんでしたが、普段は入ることのできないトンネル工事の現場を詳しく見ることができました。その後近くの露頭で変形礫の観察をしました。午後は福島県の東白川郡塙町にて棚倉断層の破砕帯の観察をしました。
    
活動報告 平成21年度~平成27年度